Instagram 分析
@illustrator_seri
羽野瀬里
調査日 2026.09.08
作品は届いている。
まだ「人」が届いていない。
フォロワー6,307人・投稿1,438件。作品の質はすでに武器になっている。伸びていないのは絵ではなく、フォローする理由と、返事をする余地のほうだ。リール15本の実数から、その2つを設計する。
Followers
6,307
フォロー中 829人
1投稿あたり
4.4人
1,438投稿 ÷ 6,307人
リール平均再生
925
直近15本/402〜1,829
対フォロワー再生率
14.7%
= ほぼ外に出ていない
コメント
15本中13本
がゼロ件
所見 / Diagnosis
数字が指しているのは、作品ではなく「入口と出口」
リール15本(2026年3月8日〜8月27日)と、フィードを含む直近24投稿を1本ずつ確認した結果、詰まっている場所は5つに絞れる。
01 / 発見
リールが「外」に出ていない
平均925回再生はフォロワー6,307人の14.7%。リールは本来フォロワー外に配信される面なのに、実際には既存フォロワーの一部にしか届いていない。最も伸びた1本でも1,829回で、フォロワー数を超えていない。つまり新規流入がほぼゼロの状態が半年続いている。
最大 1,829 / 最小 402 / 中央値 952 — 15本すべてがフォロワー数以下
02 / 表紙
リール面とフィード面が同じ絵に見える
リールのカバーが全15本とも「完成した作品画像」。プロフィールのグリッドとリールタブが見分けのつかない見た目になっていて、スクロールを止める要素(動き・人・文字)が表紙に一つもない。
一方、実際に開いた上位2本の冒頭は例外だった。1位は本人がiPadに向かって描いている姿、2位は手元で3Dペンの樹脂が立ち上がっていく瞬間。人・手・変化が最初のカットにある2本だけが抜けている。
上位2本 平均1,724 / 残り13本 平均934(+85%)
03 / 会話
キャプションに「返事の余地」がない
キャプションは日英2言語で丁寧に書かれ、作品名・込めた想い・登場する動植物の学名リストまで揃っている。読み物としては完成度が高い。ただし全文が宣言(〜を描きました/〜と名づけました)で終わり、問いも呼びかけもない。読み終えた人に、やることが残っていない。
コメントが付いた2本は、どちらもワークショップ告知だった。「申し込みたい」という行動の余地があった投稿だけが会話になっている。
コメント総数 5件/15本 = 1本あたり0.33件
04 / 継続
ひと月まるごと消える月がある
直近5か月で29日と35日の空白が2回。投稿は「作品が仕上がったら」「イベントが決まったら」のタイミングで出ていて、枠が決まっていない。アルゴリズム上の不利以前に、見る側の生活リズムに入り込めない。
24投稿/153日 = 月4.7本。うち33日は連投、64日は無投稿
05 / 名刺
プロフィールが依頼者向けで、ファン候補向けではない
現在のプロフィールは「動植物を描くイラストレーター/Package, Ad, Editorial/ご依頼はEmail・DMへ」。仕事を発注する人には完璧だが、たまたま1本のリールを見た人が「この人をフォローすると何が続けて見られるのか」を判断する材料がない。
ハイライトも4つすべてが「9月ワークショップ」「8月ワークショップ」「HALO ESPRESSO展」「Cafe.L.A展示」という期限つき告知。終われば価値がゼロになる枠に、一等地を4つ使っている。
ハイライト4枠中 4枠が告知 / 常設コンテンツ 0枠
人・手・変化が冒頭にある(開いて確認済み)
作品・制作過程
告知・報告
リール15本の再生数(2026年3月8日〜8月27日、降順)。上位2本は開いて冒頭を確認したもので、いずれも1カット目に人か手が映り、目の前で何かが変わっていく。下位帯を占めるのは、完成した絵を静止的に見せる回とワークショップの作品紹介3連投。最下位402回は最新投稿でもある。
直近24投稿の並び(2026年3月28日〜8月27日)。連投とひと月の沈黙が交互に来ている。7月はまるごと1本もない。リールは8月に4本集中しており、「思い出したときに走る」形になっている。
中心仮説 / Thesis
ファンは「絵が上手い人」にはつかない。
「次に何が出てくるか知りたい人」につく。
羽野瀬里のアカウントには、その材料がすでに全部ある。クルマサカオオム、スタートデザートピー、グリーンバードフラワー、ドンキーオーキッド、マサイキリン。名前も形も知らない生きものを、絵と一緒に説明できる人は日本にほとんどいない。実際「Encyclopedia01」というタイトルを自分で付けているし、キリンの4種の見分け方まで書いている。
やっていることは図鑑なのに、出し方が個展になっている。1枚ずつ完成品として発表するから、1回見て終わる。番号のついた連載にすれば、同じ絵が「次」を作る。この転換ひとつで、発見・会話・継続の3つが同時に動く。
施策 / 優先度順
7つ。上から順に、効く速さで並べた
優先度は「効果 ÷ 手間」で決めている。01〜03は絵を1枚も描かずに今日できる。
優先度 01
プロフィールを「入口」に書き換える
所要 30分効果 即日費用 0円
- 1行目を肩書きではなく唯一性にする。「動植物を描く」人は無数にいるが、「オーストラリアの固有種だけを描き続けている」人はほぼいない。この差を1行目に出す。
- 「フォローすると何が続けて見られるか」を明示する。曜日まで書くと、通知を切らない理由になる。
- 依頼導線(Email / DM / Works)は3行目以降に下げる。発注者はそこまで読む。通りすがりは読まない。
書き換え案
オーストラリアの動植物だけを描いています🌿
クルマサカオオム/スタートデザートピー/ドンキーオーキッド
▸ 火・木 制作の途中経過と、その生きものの話
▸ 京都でワークショップ開催中
Package・Ad・Editorial のご依頼は DM / Email へ📩
優先度 02
ハイライトを告知置き場から常設コンテンツに
所要 2時間効果 1週間費用 0円
- 先頭に「はじめまして」を新設。自己紹介・なぜオーストラリアなのか・パースで展示したこと(HALO ESPRESSO の3か月展示は強い実績)を5〜7枚。プロフィールに来た人が最初に触る場所を、期限のないものにする。
- 2番目に「図鑑」。描いた生きものを名前つきで並べる。ここが実質的なポートフォリオになり、検索から来た人の滞在時間を伸ばす。
- 3番目に「制作の裏側」。伸びている冒頭カット(手・iPad・線が色になる瞬間)の在庫置き場。
- 終了したワークショップ・展示は消さず、「アーカイブ」1枠にまとめる。実績として効く。
優先度 03
リールの表紙と最初の1.5秒を規格化する
所要 1本あたり+10分効果 2〜3週間根拠 上位2本 vs 下位13本
- 1カット目に必ず手か本人を入れる。完成品から始めない。実測で最も伸びた2本の共通点はこれだけだった。
- 完成形は最後まで見せない。今は冒頭で完成品を出してしまい、続きを見る理由が消えている。
- 表紙に日本語7〜12文字。グリッド上でリールとフィードを見分けられるようにする。
例:「この鳥、日本に11頭」/「名前が“ヘビの茂み”の花」/「線1本から始める」/「砂漠でだけ咲く赤」
- 音源は毎回変えず、シリーズごとに固定する。連載として認識されやすくなる。
優先度 04
1枚の絵を、番号のついたシリーズにする
所要 設計に半日効果 4〜8週間狙い 保存・共有・フォロー理由
すでに素材が揃っている3本を、週1本の定期枠として立てる。どれも新しく描き下ろす必要はなく、既存の作品と知識で回せる。
- 《オーストラリア動植物図鑑》No.01〜/ 絵+和名+英名+「1つの驚き」。マサイキリン回(4種の見分け方)が実証済みの型で、これは保存される情報になっている。番号を振るだけで連載になる。
- 《名前がおかしい植物》/ グリーンバードフラワー(鳥の形)、ドンキーオーキッド(ロバ)、コッキーズタン(オウムの舌)、カクチョウラン。ネタとして強く、シェアされやすい。すでに全部描いている。
- 《絵の中の生きものを探せ》/ 最新作「as long as...」で本人が「どこに隠れているか探してみて」と書いている。これを毎回の定型にする。コメント・保存・再視聴が同時に取れる唯一の型。
優先度 05
キャプションの最後を、宣言から問いに変える
所要 1本あたり+5分効果 即日〜2週間現状 0.33件/本
- 日本語を先頭3行に集約する。Instagramは3行で折りたたむ。今は美しい前置きから始まっているため、「続きを読む」の前に何の話か分からない。
- 英訳は「───」以下にそのまま残す。オーストラリア軸である以上、英語圏は本命市場なので削らない。
- 最後の1行を必ず問いにする。答えが1語で済むものにするのがコツ。
「この絵に何種類の生きものが隠れていると思いますか?」
「次はどっちを描いてほしいですか? A:ウォンバット/B:ハリモグラ」
- ストーリーズのアンケート機能を描く前に使う。投票した人は完成投稿を見に来る。「自分が選んだ絵」になった時点で、その人はもうファンに近い。
優先度 06
発見の導線を3本引く(今はゼロ本)
所要 準備2時間効果 3〜6週間最大の伸びしろ
- ハッシュタグを「大きいもの」から「固有名」へ。#イラストレーター や #植物イラスト は投稿数が多すぎて数分で流れる。逆に #クルマサカオオム #スタートデザートピー #マサイキリン #perthart #westernaustralia は競合が薄く、検索する人=その生きものが好きな人。濃さがまるで違う。30個のリストを作って作品ごとに使い分ける。
- 場所タグを毎回入れる。Perth/John Forrest National Park/京都。パース在住の日本人、オーストラリア旅行を計画中の人という、明確に存在する層に届く。
- コラボ投稿(共同投稿)に切り替える。これが最大の取りこぼし。HALO ESPRESSO の3か月展示も、京都のワークショップ会場も、すべて単独投稿だった。共同投稿にすれば相手のフォロワー全員のフィードに同じ投稿が並ぶ。カフェ・ギャラリー・花屋・動物園/植物園・保護団体。すでに関係のある相手に頼むだけで、費用は0円。
優先度 07
ワークショップを「告知」から「見せ場」に変える
所要 撮影のみ効果 開催ごと収益に直結
3月のワークショップ告知は作品紹介の3連投で、551・596・633回。ほぼ最下位帯だった。一方8月の3Dペン告知は1,618回で全体2位。違いは、手元で樹脂が立ち上がっていく変化が映っていたことだけ。
- 告知に作品写真ではなく、参加者の手・表情・完成した瞬間を使う。集客と再生数が同時に取れる。
- 開催後に「できた作品ぜんぶ」をカルーセルで出す。参加者が自分の作品を探して保存・シェアする。次回の申込導線にもなる。
- 参加者にリポストを促し、共同投稿に招待する(優先度06と接続)。
運用 / 週次テンプレート
週4枠を固定する。中身より枠が先
月4.7本を月16本に。ただし「頑張って増やす」ではなく、曜日を決めて、その日に出せるものを出す。空白の29日と35日を二度と作らないための枠組み。
Tue / 発見
図鑑リール
新作+その生きものの驚き1つ。冒頭は手か本人。表紙に日本語7〜12文字。固有名ハッシュタグ。
目的:フォロワー外へ出す。
Thu / 関係
制作過程リール
線が色になる瞬間、失敗した箇所、使っている道具。完成形は出さない。
目的:人柄を届け、既存フォロワーを能動層に変える。
Sat / 保存
フィード投稿
完成作品を高解像度カルーセルで。細部の寄り、登場する動植物の名前一覧。
目的:保存され、あとで見返される資産にする。
Sun / 参加
ストーリーズ
次に描くものの投票、質問箱、制作中のちら見せ。
目的:来週の投稿に「自分が関わった」人を作る。
月1回、ワークショップ/展示を上記のいずれかの枠に差し込む。単独枠を新設しない ── 告知だけの月をなくすため。
90日 / Roadmap
土台 → 検証 → 拡張
第1〜4週9/8 — 10/5
土台をつくる(絵は描き足さない)
プロフィール書き換え、ハイライト再設計、リール表紙テンプレート3種の作成、固有名ハッシュタグ30語のリスト化、週4枠のカレンダー確定。既存作品のストックからシリーズ第1〜4回分を先に仕込む。
通過条件:週4本を4週連続で落とさない。数字はまだ追わない。
第5〜8週10/6 — 11/2
どの型が効くか検証する
シリーズ2種を各4本ずつ投下。表紙テキストの有無、冒頭が「手」か「本人」かで比較する。並行してコラボ投稿を2件仕込む(京都の会場1件+オーストラリア関係1件が現実的)。プロアカウントのインサイトで、外部リーチ比率とフォロー転換数だけを見る。
通過条件:平均再生 2,000超/コメント 1本あたり3件/非フォロワー到達 30%超。
第9〜12週11/3 — 11/30
効いた型に寄せて広げる
検証で伸びた型に投稿の6割を寄せる。英語圏向けに画面テキストを英語にした版を週1本(オーストラリア軸の本命市場)。ストーリーズからワークショップ予約・受注DMへの導線を常設化し、ファンを収益につなげる。
通過条件:月間フォロワー +1,000/ワークショップ満席/仕事の相談DM 月5件。
数値目標
| 指標 | 現在(実測) | 30日 | 90日 | 効かせる施策 |
| 月間投稿数 | 4.7本 | 16本 | 16本 | 週次テンプレ |
| リール平均再生 | 925 | 1,500 | 3,000 | 03・06 |
| 対フォロワー再生率 | 14.7% | 25% | 50% | 03・04 |
| 平均いいね | 58 | 90 | 180 | 04・05 |
| 平均コメント | 0.33 | 2 | 5 | 05 |
| フォロワー | 6,307 | 6,800 | 8,500 | 01・02・06 |
| 保存数 | 未計測 | 計測開始 | いいねの30% | 04 |
保存数・非フォロワー到達率・プロフィール遷移数は外部からは見えない。プロアカウントのインサイトで初週に必ず控えておくこと。この3つが本当の先行指標で、フォロワー数は結果でしかない。
やらないこと / Guardrails
この4つは、やると逆に減る
- 作風を変えない。黒い線と鮮やかな面、オーストラリアの固有種。この一貫性が唯一性そのもので、6,307人が集まった理由でもある。伸ばすのは中身ではなく、出し方。
- フォロー返し狙いの大量フォローをしない。すでに829人をフォローしている。この数字は新規訪問者から見て「相互狙い」に見え、作品の格を下げる。むしろ整理したほうがいい。
- 大型ハッシュタグを量産しない。#イラストレーター #イラスト #art といった巨大タグは、いま実際に効いていない(再生の85%がフォロワー圏内なのがその証拠)。30個の固有名リストに置き換える。
- 告知だけの月を作らない。3月のワークショップ告知3連投は下位帯だった。告知は「見せ場」の中に混ぜたときだけ伸びる。
この分析の出所と限界。2026年9月8日時点で公開されているプロフィール、リール15本(2026年3月8日〜8月27日/各投稿ページを個別に開いて再生数・いいね・コメント・投稿日・キャプション・使用音源を取得)、および直近24投稿の並びに基づく。再生数・いいね数は表示値、投稿日はInstagram表記。
冒頭カットの内容を実際に映像で確認したのは上位2本(1,829回・1,618回)のみで、残り13本の分類はキャプションと表紙画像からの推定。
保存数・シェア数・非フォロワー到達率・プロフィール遷移数・フォロワーの国別/年齢構成はアカウント所有者のインサイトからしか見えず、本分析には含まれていない。とくにフォロワーの日本/オーストラリア比率は、日英2言語の出し分けと英語圏への投資判断を左右するため、着手前に必ず確認することを勧める。